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マスク世界商戦

 まだプレイヤーが出そろっていない感じもするが、世界全体の話をここで。

マスク重商主義の台頭

 まだ中国が流行を抑え込めていなかった頃、日本企業の中国工場が日本向けにマスクを出荷しようとして地元官憲にマスクを接収され、日本政府が抗議したら「そのような規制は存在しない」とあしらわれた事案が小さく報道された。少し後になって、米国3Mの中国にある工場も似たような状態であったと報じられた。いざ流行に巻き込まれると、ドイツもアメリカも似たようなマスク輸出禁止を行った。

 日本は輸出禁止はしなかったが、2月25日に都道府県等が厚労省を通じて優先供給を卸・販社(の業界団体)に要請する仕組みを作った。一定基準を満たす切迫した事情のある都道府県に優先供給され、都道府県が購入して、備蓄と合わせて医療機関に供給する仕組みであった。これは地方自治法第245条の4(技術的な助言)に基づくものであった。やんわりとした、しかし公的な供給要請が間断なくメーカーに届くようにしたわけである。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000626017.pdf https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000601154.pdf

 並行してメーカーへの生産設備補助金や純粋な商談で、政府が増産分を買い取って配布する仕組みも作られた。布マスクもこの中での措置である。

 さらに3月3日には、国民生活安定緊急措置法第22条第1項に基づいた売渡指示で政府がマスクを購入し、北海道の家庭に配布した。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09935.html

 そういうわけで、「どの国も自分がピンチになるとマスクを外に出さない」ことが国際共通理解になってしまった。あとは各国が「もしもに備える堤防にいくら出すか」という話になったわけである。

中国の輸出ドライブと台湾の参戦

 中国は量的にはもともと世界のマスク市場を圧していたのであり、再び圧しようとしている。もちろん数で言えば、流行前でさえ1枚100円を超えていたN95などの防塵マスクは少数であり、一般用不織布マスクの商売敵は布マスク、ウレタンマスクなどである。一般人が生活する際のマスクは性能的には「割とどうでもよい」ので、足りなければ(気に入らなければ)不織布マスクでなくてよい。ここではN95・KN95マスクの話をしよう。

 台湾はマスク生産をしばらく国家が管理し、市民には購入上限を貸し、輸出や海外寄贈は戦略的に判断していた。6月1日から生産量の一部を国家備蓄などに充て、それ以外の分は輸出ができるようになる。

台湾、6月1日にマスク輸出解禁の見通し 国内で販売も可能に | 社会 | 中央社フォーカス台湾 http://japan.cna.com.tw/news/asoc/202005250006.aspx

 記事にある日産2000万枚弱は、中国からの輸出が1日14億枚を超えている現状では相対的にわずかで、ベトナムの潜在生産力よりは多いという程度である。

 N95といいKN95というが、基本的には認証する主体がどこかと言う話であり、どちらも第三者の検査機関を使って「相当品」をうたうメーカーが多い。N95マスクの場合、NIOSHが認証したメーカーと銘柄は一覧表になっている。

https://www.cdc.gov/niosh/npptl/topics/respirators/disp_part/n95list1.html

 中国・台湾混在のBtoBサイトを見ると、N95マスクだと言いながらNIOSHのリストにない台湾メーカーが結構ある。台湾が人口以上の輸出余力を持つことは疑いないが、野良銘柄のKN95がFDAになで斬りにされたあとでは、世界市場に一種の厳しさが加わっていて、ゲームチェンジャーになれるかどうかはまだわからない。

http://www.manufacturers.com.tw/beauty/Mask-N95.html

 6月1日まで台湾製マスクは輸出できないはずだが、台湾のディーラーと契約してKN95を販売し、発送し始めた日本の業者がある(5月下旬)。たぶんそれは「台湾企業の中国工場」の製品であろう。

バブル崩壊の様相

 5月31日、Amazon.comで不織布マスクの最安値は1枚当たり14セントだった。日本の価格暴落状況を少し遅れて追っている。「マスククロニクル」で追っているように、中国ではマスク企業の休止が目立ち、一般用マスクにしか使えない「90%」不織布は値がつかない状態だと言う。繰り返すが、もともと中国は世界で一番安いレンジのマスクで圧倒的なシェアを持っていたのだから、実績のない参入企業が淘汰されて、しかし中南米などしばらく新たな需要も追加されて、流行前をいくらか上回る生産に落ち着くのだろう。

 Amazon.comで「KN95」を検索すると、それらしいマスク(パッケージにもKN95と書かれている)が引っかかるが説明文には何も書いてないものが多い。良心的な売り手は「緊急使用許可リストには載っていない」と明記している。アメリカ3MのN95マスクは3ドル前後だが、こうしたマスクは安いものだと2ドルのものもある。おそらく、NIOSHのN95認証を取ったり、中国の公的機関からKN95認証を受けたりしている少数のメーカー以外は、この高価格の市場にもう入れないのではないか。


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Last-modified: 2020-05-27 (水) 10:15:39 (157d)