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マスクの規格について

「サージカルマスク「サージェリー(手術用)マスク」「N95マスク」を定義する日本の公的規格はない。「効能」があるように表示すると薬事法違反などに問われることがあるため、日本衛生材料工業連合会の表示・広告自主基準は存在するが、加入義務もないし、この観点から輸入が規制されてもいない。

 医療用マスクにも日本の規格はないが、米国試験材料協会(ASTM)の規格(レベル1~3)と、米国労働安全衛生研究所のN95規格がよく用いられる。マイソフの理解では、少なくともASTMレベル1であって医療機関で使うのに適するものがサージカルマスク、手術に応じたレベル(高いほど血液などを通しにくい)のサージカルマスクで、頭の後ろで紐を結んでぴっちり装着する(タイ・オン)ものがサージェリーマスクと呼ばれているようである。

 N95は微粒子を吸い込まない性能を強調した規格で、もともと防塵マスクの規格であり、医療全般に使われるものではない。我が国の防塵マスク規格では、DS2マスクがN95マスクと「ほぼ同一仕様」と書かれているWebページもあるが、N95マスクの試験は直径0.3μm、DS2マスクは0.06~0.10μm(平成12年労働省告示第88号)の粒子で行われるので、ややDS2マスクの方が厳しい基準であろう。

 ちょっとわかりにくいのは、ASTMのレベル2以上はPFE(0.1μmの微粒子を通さない比率)性能がN95より高いことである。ところが、立体型といっても周囲をぴっちり保護するマスクではないので、ウイルスによる伝染病には(サージカルマスクより高価な)N95マスクが必要とされるわけである。ASTMに適合するにはいくつかの条件があるが、血液などが飛び散ったとき裏に通さない性能は、防塵マスクでは問われない項目である。

(参考リンク)  http://www.jhpia.or.jp/standard/mask/index.html https://www.medline.co.jp/empower/masks https://www.safety.jrgoicp.org/ppe-3-usage-sugicalmask.html https://www.iwatsuki.co.jp/column/0265.html https://www.iwatsuki.co.jp/column/0265.html

 中国にはKN95(GB2626-2006)という規格があり、カタログスペックではほとんど差がない。まあ検査し認証するのがどこかと言うのが最大の違いであろう。4月3日付で米国のFDAはN95の代わりにKN95を使う緊急利用許可を出した。日本でも4月10日付で、(もともと明確な医用マスクの規格がないのでこういう言い方になるのだが)「KN95 マスクなどの医療用マスクも N95 マスクに相当するものとして取り扱い、活用するよう努めること」という「考え方」を周知するよう厚生労働省から都道府県等に事務連絡が発せられた。

(参考リンク) https://www.fda.gov/media/136664/download https://www.fda.gov/media/136663/download https://www.mhlw.go.jp/content/000621007.pdf

 なお、N95マスクがもともと防塵用マスクであるのと同様に、GB2626-2006も防塵用マスクである。KN95が「防塵用(工業用)マスクだから」医療用途に適さないという判断は、N95マスクとの比較では適切ではない。ただ中国が医療用マスクの品質にうるさくなったためか、「非医療用KN95マスク」が輸出されている現実はあるし、もともと防塵用マスクなのだから間違っているとまでは言えない。

 中国には一般用マスクにも品質基準がある。T/CTCA7-2019がそれで、2017年の中華人民共和国標準化法に基づき、中国紡織品商業協会(CHINA TEXTILE COMMERCE ASSOCIATION)が届け出て政府の認可を受けた「普通防护口罩(普通防護口覆)」の業界標準(団体標準)である。

中華人民共和国標準化法 概説と本文(ジェトロ) https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/01/e7485c0a2c0213bf.html  https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20180101-1_rjp.pdf

ところがそれ以前の国家規格であるGB/T 32610-2016を基準とするマスクもまだ生産されている。また、GB/T 32610-2016と併記して、Q/で始まる規格への合格をうたっているマスクもある。このQ/で始まる規格番号は、企業自身が「企業標準」を登録し、その通りの品質であることを約束するものである。

(参考リンク) http://safety.k-tecs.co.jp/standards/chn.html

中国製N95、KN95マスクをめぐって

「マスクの規格について」「2020年マスククロニクル」の記事と重複するが、N95マスク・KN95マスクをめぐる情勢が何度も変化したので、アウトラインをここでおさらいしておく。参照リンクは繰り返さないので上記二つの記事をご覧いただきたい。

 4月3日、FDAは次の3条件のどれかをみたすマスクに緊急使用許可(EPA)を与え、医療従事者用マスクと認めてよいと通知した。なおすべてについて、FDAは個別に検証する可能性を留保している。

  • (1)同一企業の他の型番のマスクがN95マスクとして認証されており、所在国の公的規制に適合するもの
  • (2)中国の国家薬品監督管理局(NMPA)または地方政府が公的に[KN95に適合すると]認証したもの
  • (3)その他の試験機関等で直近45日以内にNIOSHの定めるテストを行い、除去率95%以上を示したもの

 ところがFDAが実物を検査したところ、きわめて多くのサンプルで除去率が95%に満たなかったことから、FDAは5月7日に上記(3)を項目ごと廃止し、それに当てはまる銘柄を緊急使用許可リストから削除した。

 それとは別に、中国BYD社はカリフォルニア州政府と商談し、N95認証を一定期日までにNIOSHから取得する条件でN95マスク3億枚、総額10億ドルの契約にこぎつけていた。ところが5月4日、NIOSHはBYD社に、同社の特定型番をN95マスクとして認証する申請を却下する通知を出した。ロサンゼルス・タイムス紙によると、BYD社は4件の申請を出し、1件は取り下げ、5月4日に3件目が却下された。

 FDAの緊急使用許可には、(2)に該当するKN95マスクとして、BYD社の1型番がまだ残っている。しかしカリフォルニア州との合意はKN95では満たせないようである。

 東洋経済オンラインの5月16日付記事によると、31日までに認証を取ることで契約解消を回避するぎりぎりの努力が続いているとのことである。

マスク生産世界最多「中国BYD」返金騒動の真因 カリフォルニア州では契約通りに納品されず | コロナショックの大波紋 - 東洋経済オンライン https://toyokeizai.net/articles/-/350366

 ロサンゼルスタイムスはカリフォルニア州から契約内容を聞き出すのに難渋しているようだが、中国メディアは反対側から取材して5月31日と言う新たなデッドラインを聞き出したようである。

Carmaker BYD to Repay California $247 Million for Missing Medical Supply Deadline(Caixin Global May 08) https://www.caixinglobal.com/2020-05-08/carmaker-byd-to-repay-california-247-million-for-missing-medical-supply-deadline-101551730.html

 N95マスクはアメリカの規格であり、アメリカがこうした烙印を押すことは世界に間接的な波紋を投げるかもしれない。5月8日前後に報じられたカナダ政府調達分のN95マスクに800万枚以上の不合格品が出たニュースでは、カナダ政府は独自のテストを行ったようである。

 この巨額取引を問題化するまで議会が知らされていなかったことが、新たな火種となっている。この件に関するロビイスト企業は商談成功の報酬を受け取るが、政治案件の報酬ではないので公開する義務がない。これが一種のヤミ報酬として知事サイドからの貸し(ないし、借りの清算)となるのではないか、というストーリーが語られている。

https://californiaglobe.com/section-2/exclusive-gov-newsoms-byd-mask-deal-profitable-for-insider-dealmakers/

 6月2日、現地法人が取材に応じたところでは、認証を取れるまで納期は再延長された。なおソフトバンク向けの契約もN95認証が取れることが条件になっており、(その分は)納品されていない。

 サージカルマスクはカリフォルニア州に納品されている。日本でも某大手スーパーに並んですぐ撤去されたというSNS上の写真投稿があったが確認できていない。

https://www.marketscreener.com/BYD-COMPANY-LIMITED-5640763/news/China-s-BYD-Gets-Extension-on-1-Billion-California-Mask-Deal-30711261/

 6月8日(現地時間)、カリフォルニア州政府はBYD社が7日にN95認証を受け、契約は果たされると発表した。

https://www.latimes.com/california/story/2020-06-08/byd-earns-federal-approval-for-n95-masks

 どうやら、FDAが5月7日に改定した上記のルールが、6月6日付で再改定されたことに関係している。

https://www.fda.gov/media/136664/download  https://www.fda.gov/media/136403/download

 新しいルールでは、日本のDS2/DS3/DL2/DL3、欧州のCEなどいくつかの外国規格で認証されているものをEUAが与えられる条件に加えた。また、また、5月7日に民間機関での同等性認証を認めないとした決定はそのままにして、FDAがメーカーからの申し込みを受け付け、NIOSHなどFDAが認めるアメリカの検査機関がサンプル抽出まで行い、95%以上の検査粒子を止めた検査結果が出たら、EUAを出すこととした。

 つまりBYDはN95認証そのものを受けようとしたが、ダメだった。KN95認証を中国政府検査機関から受けた型番はあって、今でもEUAリストに載っているのだが、何らかの理由で別のモデルを輸出しようとした。そしてFDAと交渉して(通知文にはin response to continued questions and concernsとある)、費用は払うからEUAに適合する証明をNIOSHから出してもらえないかといった。そして6月7日、(おそらくN95認証申請の過程でそこはクリアしていたので)その証明を受けた。

 この件を伝えるカリフォルニア州知事室?のコメントが「BYD North America has received certification from the National Institute for Occupational Safety and Health (NIOSH) 」と言っているのは変な表現である。N95を認証するのは規制当局FDAであって検査機関NIOSHではないからである。しかし上記のように「NIOSHの検査結果が来て、それでEUAが取れるようFDAがルールを変えた」のであれば、意味が通る。

https://www.gov.ca.gov/2020/06/08/governor-newsom-announces-federal-health-and-safety-certification-of-life-saving-n95-masks/

 N95認証が降りなかったのは中国での現地調査の結果、工場にNIOSHの気に入らないところ(クリーンルームの状態とか)があったからではなかろうか。どっちみちそこは、EUAをもらうメーカーについてFDAがいちいちチェックしていないではないか……と談じ込んだのだと思う。


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Last-modified: 2020-05-20 (水) 08:37:15 (79d)